社会・インフラ・人物・文化など、異なる視点で見えてくる馬と人を郵便が紡ぐ7つのおはなしです。郵便・切手が伝えるその時代の人々の社会・生活が見えてくる、それぞれ深掘りされた興味深いお話です。考えてみると、馬は牛や豚のように主として食料としての家畜とは異なり、約5千年前の古代から一貫して人の活動を共に支えるパートナー・社会インフラとしての役割を担ってきています。馬は人の移動能力を飛躍的に拡張し、行動範囲や生活圏を大きく広げました。紀元前2000年頃になると、馬車が世界各地で普及し、馬は単なる労働力ではなく、人と情報をともに移動し、生活を共有する存在となっていました。そういう側面を存分に楽しめます。ぜひ読んでみよう。
ブラウンシュヴァイクの馬(第1章)では、世界最初の馬デザインのブラウンシュヴァイクの切手から、中世から近代の欧州郵便事情について詳細に書かれています。タッシス家の郵便網が資産没収された結果、商人たちが独自に構築した郵便網が、独立まもないオランダの発展を支えるという、とても興味深い歴史があります。ただこの章では、銀河英雄伝説ではないので、読んでいて別の意味でわくわくしないように注意(?)が必要です。ブラウンシュヴァイクやマクシミリアンは出てきてもリップシュタット貴族連合は出てきません!?七つの海のシーホース(第2章)は、タツノオトシゴに注目した世界の切手の面白い話題、郵便馬車(第3章)では社会インフラとして各国(日本も)の馬と郵便の興味深い話題が満載です。その中で、美術・芸術・文学・音楽の発展につながっている点は大注目です。ポニーエクスプレス(第4章)は、おもに北米(中米)の高速情報伝達についての歴史と話題です。そういえばアメックス(アメリカンエクスプレス)って、確かにそうだよね。
さて、神功皇后は馬に乗ったのか(第5章)と徐悲鴻と奔馬(第6章)は、人物を中心にその歴史が詳しく書かれていて、本当に面白いです。武のシンボル・軍神である神功皇后を後世がどう描いているか?どんなデザインにしているか?とても面白いです。また、徐悲鴻(1895~1953年 中国画家・中華人民共和国の国旗、国章、国歌の制定に関わる、中央美術学院初代院長)というなじみのない人物について、背景や興味深い歴史が書かれています。確かに、芸術家が活躍する背景に時の有力者との関わりがあるのは当然です。ここではとくに蔡元培(1868~1940年、清末民初の政治家・教育家、中華民国初代教育総長)や朱徳(1886~1976年、中華人民共和国の政治家・軍人、中国人民解放軍「建軍の父」)との関係はとても興味深いです。ぜひ読んでみてください。もう一つ、満蒙の“蒙”と馬(第7章)では、モンゴルおよび周辺国の近代史が扱われています。もちろん日本も入っています。スーホの白い馬は、確かに子どもの頃に国語の教科書で読みましたね。
馬と切手を題材に、オムニバス形式で7つの話題を通して、人がどのように活きてきたのか・生きてきたのか、ぜひ楽しんで読んでみましょう。
