「人を最も引きつけるのは人である。」<都市という劇場>の主役は人である。人を引き立たせ、人が人を呼ぶような空間が、魅力的なデザインがされた空間と言えるだろう。
「都市空間を人が使いこなせないほど不器用に設計するのはむずかしいはずなのに、そういうところが数多くある。」それは、限られた都市空間に、親しい人たち(家族、友人、恋人、同僚など)と過ごす場、それ以外の全く知らない他人とシェアする場、そして一人で自分らしくいられる場のそれぞれがうまくデザインされていないからではないか。
著者のウィリアム・H・ホワイトは、1900年代に主にニューヨークで活躍した都市社会学者、人間行動学者である。邦訳された著書も多い。ニューヨークと非常に似ている点が多いという点でも、東京はニューヨークに学ぶべきであると日本に向けたメッセージを送っている。
都市について、デザインについて、人の行動について興味・関心がある人だけでなく、都市に住み、都市で学ぶ皆さんにぜひ読んで欲しい。そして、できれば原著「CITY Rediscovering the Center, 2009, University of Pennsylvania Press」にあたり、生き生きとした描写を味わっていただきたい。