2014年は「世界結晶年」です。約100年前にラウエが結晶によるX線の回折現象を理論的に解き明かして結晶中の電子密度分布、即ち原子の分布を解析できることを提示し、1914年にノーベル賞を受賞しました。さらにブラッグ親子はNaClの結晶構造解析を行い、初めて原子の並びを見ることに成功して1915年にノーベル賞を受賞しました。この3人の功績を讃えて国連は2014年を世界結晶年に定めました。
以来、結晶学は結晶中の分子の化学構造解析や立体構造解析等々に大きな成果を上げています。特に、DNAの2重らせん構造、タンパク質の立体構造は身近なものとしてよく知られています。
今回紹介する本の著者は企業の研究所と大学に籍を置かれて、機能性物質から生体高分子と広い範囲の化合物の構造に精通しています。産学に渡る広い観点を持った著者は、結晶学の原点に立って結晶の美しさを解説し、初心者を結晶学の楽しさへと導く世界結晶年にふさわしい書です。