筆者の円堂氏は浦安市在住の文芸・音楽評論家である。本書の論理展開はご自身の方法論なのであろう単純で明快である。その明快な論法によって、ミッキーマウスをはじめとするディズニーランドのキャラクターとアルバイトが9割を占めるキャスト(従業員)の行動がパーク内で「オンステージ化(見られることを前提とした行動)」していることを説明したうえで、今日のわれわれの身の回りのさまざまな活動が「オンステージ化」していることを指摘している。
B級グルメによってまちおこしを諮る「B-1グランプリ」、ふなっしーをはじめとする「ゆるキャラ」、昭和回顧の「新横浜ラーメン博物館」「ナムコ・ナンジャタウン」、一地方の祭りが全国に広がっている「YOSAKOI」や「阿波踊り」、アニメーションの舞台を訪れる「聖地巡礼」、まちを会場とした婚活「街コン」など、予算をかけずにまちの賑わいを取り戻すこれらの活動を、ステージに登った演者とその観客(参加者)によって構成され、そしてその双方が一般市民であるとする説明からは、控えめで奥ゆかしい日本人が、21世紀において大きく変わろうとしていることを示唆しているように思える。
ディズニーランドにファンタジーだけを求める人には積極的には薦めないが、まちや人、人びとの活動に興味がある者には、その見方のひとつを知るという点で興味深く、面白い内容を含むものと思う。社会学的な考察を学ぶうえでお薦めの1冊である。