おすすめの本

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☆おすすめの本☆ 若者のためのまちづくり 服部圭郎著 / 推薦者:宇於﨑勝也(建築学科/不動産科学専攻)

 著者の服部さんは現在、明治学院大学経済学部教授で「都市の経済」などを担当されています。東京大学工学部土木工学科を卒業後、カリフォルニア大学バークレイ校環境デザイン学部で都市計画とランドスケープを学んでいます。幅広い研究の視点をお持ちですが、米国カリフォルニア州で小学校を卒業したこともあり、海外の都市へも研究フィールドが広がっています。

 本書は「はじめに」おいて、『あなたは、自分が住んでいるまちの地図を描けますか』という言葉で始まります。これはイメージマップといって都市計画研究ではどのように都市を理解しているかを明らかにするための古典的な手法です。服部さんが最初の一言としてなぜこの言葉を選んだのか、その答えが「おわりに」まで読み進んでようやくわかります。ある高校で東京のイメージ調査を行った結果、『私の思惑とはちがって、現実の高校生の多くは都市空間に対してのイマジネーションが乏しいことを調査結果は露呈していました』とあり、この調査を本書の根幹と考えていた服部さんは大変残念がります。そこで本書の執筆方針を大幅に変更し、まちを楽しめるコツや面白くないところを改善させるためのポイントとして12の項目(視点)をあげ、それが各章になっています。

 各章は私自身が都市計画の研究者として、高校生や大学生に伝えておきたいと共感するものが多く、都市計画やまちづくりを勉強するというよりも、都市の中にどのようにして居心地のよい空間を見つけるか、つくり出すかというメッセージになっており、いかに若者が都市の中で居心地のよくない空間を押し付けられているかの再確認になるでしょう。また、ビデオゲームやスマホのゲームなどバーチャルな空間での遊びが普及して、現実の都市空間での楽しみ方がわからない、現実世界のイメージが形成できないといった人にも現実の都市のイキイキとした姿を見出すヒントになるものと思います。

 現在、都市計画やまちづくりは「住民参加」から「住民主導」へと変わろうとしています。都市やまちの主体はそこに暮らしている人なのです。気軽な気持ちで本書に目を通して皆さんが主体となる第一歩にしてください。入門書としてお勧めの1冊です。

※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。クリックすると紀伊國屋書店BookWebページが開きます

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