1998年にピュリッツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞し、朝日新聞紙上の「ゼロ年代(2000~2009年)の50冊」でも第1位に選ばれるなど、本書は非常に評価が高い。だから勧めるというわけでは決してないが、世界の状況を歴史的な観点から理解し直すことができ、必ずや新しい視座を得られるだろう。
著者は、人類が農耕や家畜の飼育を通した食料生産によって、技術や産業を発達させ、文字を発明し、政治機構を発展させ、さらには、
この過程で伝染病に対する免疫力も獲得してきたことを明らかにする。ところが、地理的な制約によって、文化やシステムの発展と伝播には地域差があり、結果的に、偶然、ユーラシア大陸に居住していた者がアメリカ大陸やアフリカ大陸に居住していた者と比べて優位に立つことになった経緯を説明し、そして、人種差別がいかに馬鹿げたものであるかを強調する。
上下巻という分量を敬遠することなく、果敢に挑戦してほしい。