おすすめの本

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☆おすすめの本☆ 自分のアタマで考えよう 「知識」にだまされない「思考」の技術 ちきりん著 / 推薦者:宇於﨑勝也(建築学科/不動産科学専攻)

自分のアタマで考えよう 「知識」にだまされない「思考」の技術 著者:ちきりん 出版社:ダイヤモンド社

 

なぜ会議は長く何も決まらないのか。その回答を得られると、本学LAによるミニ・ビブリオバトルで紹介された本書を読んでみました。内容は会議のはなしだけではなく、非常に示唆に富むものでした。

筆者はブログで自身が考えたことや思ったことを開示しているうちに超人気ブロガーと呼ばれるようになったそうで、ちょっと独自なものの見方をします。本書は筆者による「思考の方法論」をまとめたものとなっており、いま何をどう考えればよいのか迷っているあなたにはきっと役立ちます。

 

本書は目次がよくできていて、各章のタイトルがその章で最も筆者が言いたいことになっています。各章のタイトルと、その章の概要を紹介することで本書の紹介に代えます。

序章 「知っている」と「考える」はまったく別モノ

「考えてみよう」と問われたとき、自身が持っている知識で問われたことの情報を補い、そのうえで回答を出してしまうことがたびたびあります。ここでは問われたことを知識で回答するのではなく、「思考」することに価値があることを示しています。「知識とは『過去の事実の積み重ね』であり、思考とは、『未来に適用する論理の到達点』です」と表現されています。

1章 最初に考えるべき「決めるプロセス」

会社で超重要なプロジェクトを拝命し、優秀な社内スタッフを集めて会議をします。毎回膨大な資料が作成され、長時間の分析がなされます。しかし、そのプロジェクトは一向に実現に至りません。この場合、プロジェクト内容の分析が重要なのではなく、どうしたらプロジェクトが具体的に実施に至るかをまず決定しなければならなかったのです。会議に向けて、または会議中の「作業」を「思考」と思い違えた結果、そのプロジェクトは他社の後塵を拝することになります。

2章 「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと

「情報を見たときにまず考えるべきことは、『なぜ?』と『だからなんなの?』のふたつです。特に数字の情報を見たときは必ずこのふたつを考えます」と書き出されるこの章は、ひとつの情報によって「考えられる」ことがどの程度あるのかがまず提示されます。この「考えられる」ことがほとんどないようでは思考をしていることにはなりません。調べれば判ることをあえて考えることが自身の「考える力」をつけることにつながります。

3章 あらゆる可能性を検討しよう

「考えモレ」をなくすために、考えることをチャート化して洗い出す方法を示しています。さらに、概念を構成要素に分解して、「すべての要素」のあらゆる組み合わせを考えるという方法も示します。

4章 縦と横に比べてみよう

筆者は、分析は「比較」から始まると断言したうえで、縦と横で比較をすることを提案します。比較の「対象」と「項目」を縦軸、横軸においてマトリックスで考えます。「自・他の比較」と「時系列の比較」を典型的な比較軸として示しています。また、応用として「プロセス比較」によってものごとの進め方の比較についても示します。

5章 判断基準はシンプルが一番

何かを選ぶとき、選択肢が多いとなかなか決まらないことがあります。しかしこれは、選択肢が多いから決まらないのではなく、「判断基準が多すぎるから」決まらないのだと筆者は指摘します。ひとつでも明確な判断基準があれば人は選択するのに迷うことはありません。要は自身のシンプルな判断基準をどのように見出して持つかが重要です。

6章 レベルをそろえて考えよう

数字を比較したり、何かを議論する場合には、対象のレベルをそろえることが重要です。議論において、反論になっていない回答はよく聞かれますが、レベルを整理することで本質的に議論すべき中身が見えてきます。

7章 情報ではなく「フィルター」が大事

就職活動を例にとって会社の選り分けには、自身の「フィルター」と企業の「情報」の両者が必要不可欠で「自身独自の価値あるフィルター」を見つけようと提案しています。

8章 データはトコトン追い詰めよう

あまりに判りやすい要約された情報の危険性を示しています。自殺統計を取り上げていろいろ「考えて」みることで、「もっともらしいデータ」の危険性を訴え、元データに遡って自身で考えることの重要性を示しています。

9章 グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する

適切なグラフの使い分けが必要であることから発し、「階段グラフ」が思考に有効であることを示しています。また、プロセスと階段グラフの組み合わせは、アイディアを導き出すのに効果的です。思考を視覚化(ひとつの方法は図化)することは、細部まで突き詰めて考えるうえで有効であることが示されます。

終章 知識は「思考の棚」に整理しよう

知識は思考の邪魔をすることがしばしばあります。しかし、知識が不要というわけではありません。筆者は「知識を思考の棚に整理する」ことで、個別の知識が意味を持ってつながり、全体として別の意味を持つ、その上に思考を積み上げる方法を奨励し、東日本大震災のテレビ報道を例に確認しています。

 

自分なりの意見を持つために「自分の頭で考える」ことが重要と判る1冊です。

 

※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。クリックするとBookWebページが開きます

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