おすすめの本

おすすめの本

☆おすすめの本☆ 一級建築士矩子の設計思考  鬼ノ仁著 
 推薦者:宇於﨑勝也(建築学科)

 主人公の古川矩子(こがわかなこ・27歳)の名前を見て、建築関係者ならニヤッとしたに違いない。「矩子」とは結構変わった名前であるが、建築の詳細断面図=矩計図(かなばかりず)からとったものとすぐに推察できる。名付けたであろう父と祖父は大工兼製材所を営んでおり、矩子も影響を受けて、幼少期に祖父に将来建築士になることを誓う場面がある。また、「こがわ」と読む姓も青森県独自のものであり、弘前バスターミナルから20歳で上京する場面で物語が始まることからも、作者のこだわりが垣間見える。矩子は地元の専門学校卒業後、東京のアーキテクトネスト一級設計事務所に入所し、実務経験を積んで一級建築士を取得し27歳で独立、江東区亀戸に自身の建築設計事務所に立呑み処を併設してオープン。ユニークなことに仕事机と立呑みカウンターは兼用となっている。この立呑み処で、飲みながら、食べながら、たまにはコーヒーを提供しながら、建築の深い話に進展し、それが時には業務につながることも。
 作者の鬼ノ仁(きのひとし)氏は建築設計事務所で10年ほど実務に携わり、その後成人向け漫画を1990年代から執筆していたが、一級建築士と1級建築施工管理士の免許を持つ、「建築」の専門家である。本書のタイトルにあるように、まさに一級建築士がどのように設計を考えていくのか、どのように解釈するのか、かなり細かな描き込みとともに、建築士はこのように考えているのかと、合点がいく内容となっている。時には建築から離れて飲み歩くだけの回もあるが、その際には実際の町並みや実存する飲食店の情報が描かれて、本当にお酒を飲むのも好きなのだと感じさせる。
 「建築あるある」が満載というか、こんな場面ばかりに遭遇していたら忙しくて大変だろうと思うが、建築を学ぼうと思っている者、学び始めた学生にとっては、「建築」とは、何を考えているのかを知るよい手引書になる。残念なのはほぼ1年に1冊しか発刊されないことで、本年5月に第2巻が刊行されたものの、第3巻は来年の春になる模様で、それほど多くのエピソードに触れることはできない。
 第2巻では1級建築士受験への道と合格の姿が描かれており、将来受験を目指す建築学生には「やるべきこと」が見つかるきっかけになるかもしれない。
 建築業界の一部ではすでに有名な漫画ではあるが、学生のモチベーションアップにつながるものと考えて、今回紹介させていただく。お勧めの1冊です。

ニチブンコミックス<br> 一級建築士矩子の設計思考 〈1〉

図書館ではこの図書を所蔵
駿:726.1 ||ki45||1   船:726.1||ki4||1

※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。
こちらをクリックすると紀伊國屋書店BookWebページが開きます。

ページトップへ