アネッテ・ヘス『レストラン「ドイツ亭」』と同じく、アウシュビッツ裁判を題材とした作品です。世界的にベストセラーとなり、映画化もされました（邦題『愛を読むひと』）。ちなみに作者は、ドイツ・フンボルト大学法学部元教授。『現代ドイツ基本権』というガチガチの専門書も執筆しています。
主人公の愛した女性が、嘘の証言により戦争犯罪者とされてしまいます。彼女はその証言を否定できるのに否定しません。否定するには彼女が隠してきた秘密を衆人環視の中で告白しなければならないからです。その秘密は、犯罪でもなければ、誰かを傷つけるものでもないのに。他方、彼女の秘密に気がついた主人公。法学部のゼミに所属する彼は、嘘の証言に基づいた誤った判決が出るのを防ぐべきか、愛した彼女の意志あるいはプライバシーを尊重すべきなのかで葛藤します。
年上の女性に憧れる思春期の主人公から壮年期の主人公までの愛情の変化にも注目。学生の今、そして20年後に、もう一度、読んでみませんか。

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