おすすめの本

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☆おすすめの本☆ 成熟スイッチ  林 真理子著  推薦者:宇於﨑勝也(建築学科)

日本大学の新理事長ハヤシさん(本書の中ではこのように呼ばれています。ここでも同様に表記させていただきます)の最新刊です。本書の随所に「日大の理事長になって」との文言が出てきますので、7月の就任以降に執筆された(または本書の最終校正までには就任されていた)ものと思われます。
本書にはハヤシさんの先輩作家、後輩作家との関わり方や、その中からの「学び」・「教え」が数多く登場します。さらに作家のみならず、さまざまな職業や立場の方と積極的に交流してきた中からの「学び」についても描かれています。ハヤシさんの交流の広さは、「理事長・学長セレクト講座【学内限定】」に登壇される講演者の顔ぶれを見てもわかります。
本書の中にも何度も登場しますが、「ルンルンを買っておうちに帰ろう(主婦の友社刊・1982.11.1)」がハヤシさんの作家デビュー作です。この『ルンルン』が発売されたとき、私は浪人中で、翌春、日大理工建築に入学することになりますが、当時は大変個性的な作家が登場したというのが率直な感想で、以後、ハヤシさんの作品に触れることはなく、本書を読んで、改めてハヤシさんは意識的に多様なジャンルを執筆され、直木賞を始め数多くの受賞歴があることを知りました(私にとって小説といえば、もっぱらSFか推理小説)。お恥ずかしい限りです。
さて本書ですが、「まえがき」に『年齢を重ねたからといって、人は自然に成熟に向かっていけるわけではありません。「老害」という言葉には肌寒い思いがします(p.7)』とありますので、我々のような年代に向けた「正しい年齢(とし)のとり方」を教えてくれるものだろうと思い読み始めました。確かにハヤシさんにとっては、人生の先輩として道標を示す、そのような意図があって執筆されたものと思われます。まず、序章で「四つの成熟」に関するテーマの頭出しをし、第一章から第四章でそれぞれのテーマに関して、さまざまな人との関わりのエピソードを交えながら人生観を披露してくれます。章間には「私の成熟スイッチ」と題して、ハヤシさんのユニークな体験が語られています。私自身にとっては、これからの人生において「よい年齢のとり方」をご教授いただけた内容でしたが、読み進めるうちに、もっと若いうちにこれらのことを知っていれば、これまでの人生の中での数々の無作法・不調法を重ねずに済んだのにとの後悔の念も浮かびました。つまり、いま、本書を学生に勧めるとすれば、「最近は誰も教えてくれることがなくなった礼儀作法」を教えてくれる(例えば、何かお世話になったとか、ご馳走になったらすぐに手書きの礼状を送るなど)本として紹介したいと思います。今は多様化が標榜され、これからは「常識」がどんどん薄れていく世の中となっていくのかもしれません。一方で、社会人として知っておかなければならない「礼儀」を身に付けておけば、やる・やらないはその場の雰囲気・TPOに従うとして、判断の材料になることは間違いありません。
人とのコミュニケーションの悩み、学修に対する行き詰まり、社会人としての作法の迷い、このような不安に対して解決のヒントを与えてくれる。お勧めの1冊です。

 

講談社現代新書<br> 成熟スイッチ

 

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