理工系なら誰でもSF(Science Fiction)が好きである。と私は信じています。私は推理小説も好きですがSFも子どものころからかなり読みました。私に大きな影響を与えたのは以前紹介した「レンズマン・シリーズ」ですが,2012年に公開されたディズニー映画「ジョン・カーター」の原作「火星のプリンセス(エドガー・ライス・バローズ著)」が大好きでした。不思議な現象が科学で説明できる。そのような科学的思考の基礎を築いてくれたのかもしれません。
本書は日本SFの黎明期から関わった著者である豊田有恒(本人は第一世代と自称)が,1960年台から今日まで,わが国のSF界を支えた作家たちとの関わりやエピソードを交えながら,今日のSF界がどのようにできあがってきたのかを語っています。星新一,小松左京,手塚治虫,筒井康隆,松本零士…誰もが一度は読んだり,見たりした作家たちがどのようにして生まれたのか,その関係性は?興味深いエピソードが盛りだくさんです。
さて,紹介されている作家のひとりに広瀬正がいます。あまり多くの作品を残さなかったので知る人ぞ知るですが,ジャズ・サックス奏者としても有名です。本書の49ページに「本人から聞いた話だが,大正末期,学徒動員で徴兵されることを避けるため,理工系に進んだという。日大工学部を卒業したが,戦後はジャズ界で生きてきた」とあるので,Wikipediaで調べると1942(昭和17)年,日本大学工学部建築科入学(現・理工学部建築学科)とあり,なんと先輩でした。しかし,卒業生名簿を確認しても本名である広瀬祥吉の名前はありません。入学はしたもののジャズに明け暮れ卒業に至らなかったものと思われます。プロのジャズバンドとして活躍し,その後SF作家になり,いくつかの賞候補として司馬遼太郎が絶賛するも受賞とはならず,47歳で亡くなります。このような知られざる人から,すでに鬼籍に入った大御所まで,日本SFが生み出されようとする瞬間から今日までを垣間見ることができます。
理工学部の学生ならゼッタイSF好きですよね。作家の人となりを知ると,小説自体ももっと面白く読めて好きになります。おススメの1冊です。
図書館ではこの単行書を所蔵
(駿:910.264||To93,船:910.2||To93)
※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。
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