おすすめの本

おすすめの本

☆おすすめの本☆ 新SI単位と電磁気学 佐藤文隆,北野正雄著 / 推薦者:松田健一(電気工学科)

我々が普段使用している様々な物理量には単位がある。重さであればキログラム,長さであればメートルというふうに,世界中どこでも通用する基準が定められている。だから,金塊の取引は世界中どこでも公正に行うことができるのだ。と,だれもが信じて疑わなかった物理量の基準が,今回,約130年振りに改訂された。様々な物理量が,基本となる物理定数(例えばプランク定数など)によって再定義されたのだ。
くしくも,日本大学が創立130周年を迎えようというその歴史の節目と,今回の国際単位系(いわゆるSI単位系)の改訂が重なって,往時の人々の創意工夫や努力はいかばかりであったかと思いを馳せる良い機会である。
とりわけ電磁気学という学問は,近代の発展に大きく貢献したまさに「人類の至宝」ともいうべき英知の結集であるが,意外なことにそこで使われている単位系には様々なものが存在していた(いる?)。これが単に趣味の問題ならばあまり気にならないのだが,主義主張も様々で,有名なところではジャクソンやパーセルの教科書にもその主張が垣間見られていた(最近,双方の教科書とも改訂された)。そのような歴史的な経緯や,単位系をどう考えるかというようなことは,電磁気学の理解に深みを与え,また先輩諸兄の歩んだ「科学技術史」としても興味深いものである。
本書は,もともと「物理定数とSI単位」という書名で出版されていたものだが,この機会に改訂されて新しい話題も追加されている。「電磁気学」と日常的に付き合う学生も,あるいは「実用上,商売に影響するから」という教員も,改めて今回の新SI単位系とそれを取り巻く物語に触れてはいかがであろうか?
内容としては,多少の数学や物理学に関する知識が問われるところもあるが,専門外であっても「まぁ,こんなものか」と気楽に読み飛ばしてよいように思う。読み終わって「SI単位系万歳!」と言えるかどうか,それはまたこれからの長い物語の新たな始まりになるかもしれない。

図書館ではこの単行書を所蔵
(駿:420.75||Sa85,船:427||Sh)

※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。
こちらをクリックすると紀伊國屋書店BookWebページが開きます。

ページトップへ