キリンラガービールの缶のパッケージデザインが変わったのをお気づきだろうか。「コンテンポラリー・トラディショナル」をテーマに、以前とは大きくイメージを変えずに、時代性を付加した、強い存在感を与えるデザインとなっている。このデザインを行ったのが、本書の著者、佐藤氏である。
最近、モノを捨てるのがはやっている。そう「断捨離」-ものに執着しない、身の回りをすっきりとさせる・・・。今、流行であるが、佐藤氏はこのパイオニアではなかったろうか。本書の超整理術とは、もちろん佐藤氏の考え方を中心にどのように商品の独自化(ブランディング)につながったかが述べられているので、ちょっと「自慢?」のようにも見えるが、本当に伝えたかったことは、身の回りを整理し、すっきりさせる。例えば、机の上とか、常に持っているカバンとかを引き合いに出しながら、究極に「超」整理することで新たな発想を得る過程を経験から導き出していることが重要である。
理工学部に所属しているわれわれは、研究のテーマ、分野こそ異なるものの、新たな発見を常に希求している。その発想法のひとつとして本書の超整理術は役立つに違いない。読後の感想は理路整然とした、あたかも3段階の整理の設定が重要かのように捉えられがちであるが、整理の仕方は人それぞれのやり方に従えばよい。しかし、理工系の学生がものごとを捉える視点として、プライオリティをつける、独自の視点を導入する、思考を情報化する、というアプローチは「アリ」と言わざるを得ない。専門書にはないスッキリ感!お勧めの1冊である。
(建築学科・不動産科学専攻 准教授 宇於﨑勝也)
参考文献 Pen2010.6.15号 №269
佐藤可士和ホームページ http://kashiwasato.com/