私たちは、たくさんの機器に囲まれながら日々の生活を送っています。そして、理工学部には機械設計・開発者を目指して入学して来た方もたくさんいます。しかし、どのようなことをすれば、新たな機械を設計・製作できるようになるのか。機械系の学科で学んでいる方でも、課題として抱え続けていることが少なくないでしょう。
この原因の一つに、大学になって初めて工学に触れるケースが多いことがあるでしょう。そしてもう一つの理由に、本書の序章でも述べられているように、世の中の実際の機械設計の多くは、長い経験と勘にもとづいて行われてきたことが挙げられます。個々のメーカーの、ノウハウの積み重ねに依るところも大きいのです。
本書では、機械設計の思考プロセスから安全性・信頼性を確保する方法、物理(力学)の応用の仕方、機構と加工方法、図面の書き方まで、設計に必要な一通りの知識について、図をたくさん用いながら簡潔な文章で説明されています。機械系の、初学者から、卒業研究や修士論文の研究に取り組んでいる学生の皆さんまで、繰り返し読まれると良いと思います。一度に理解出来なくても一向に構わないでしょう。授業と重複する箇所もあるでしょうし、短時間ずつでも、繰り返し手に取って読まれることをおすすめします。
また、理工学部を卒業する学生の皆さんは、各分野に応じたものづくりのための新しい機械装置を、開発依頼する場面もあるかと思います。機械設計の考え方が身についていると、開発設計者と協力して、より優れたものが出来上がることでしょう。ぜひ本書に挑戦してみて下さい。
「バランス感覚」。見た目でバランスのよいものは無駄のない設計になっていると述べられています。なぜかを読み取ることを、一つのテーマに読み進めてみましょう。