おすすめの本

おすすめの本

☆おすすめの本☆『ライト・スタッフ』トム・ウルフ 著
 推薦者:奥山圭一(航空宇宙工学科)

ライトスタッフ』は,アメリカの宇宙開発黎明期を舞台に,音速の壁に挑んだテストパイロットたちと,マーキュリー計画に選ばれた宇宙飛行士たちの姿を描いた作品です.

「ライトスタッフ(The Right Stuff)」とは,極限状態においても冷静さを失わず,困難から逃げることなく,自らの責任を果たすための資質を意味します.本書では,それが単なる勇敢さや精神力ではなく,長年の訓練によって培われた技量,的確な判断力,誇り,そして仲間からの信頼によって成り立つものであることが描かれています.

航空宇宙技術の発展の背後には,華々しい成功だけでなく,数多くの失敗や事故がありました.未知の領域に挑戦したパイロットや技術者たちは,危険をただ恐れなかったのではありません.機体の状態を正確に把握し,事実に基づいて判断し,失敗から学びながら,次の挑戦につなげていきました.本書を読むと,航空宇宙開発が高度な科学技術だけでなく,それを担う人間の姿勢によって支えられていることがよく分かります.

大学で航空宇宙工学を学ぶ学生は,構造,材料,流体,熱・推進,制御など,多くの専門知識を身に付けます.しかし,安全で信頼できる航空機や宇宙機を実現するためには,知識や計算能力だけでは十分ではありません.都合の悪い事実から目をそらさず,専門家の意見に耳を傾け,自らの判断に責任を持つ姿勢が不可欠です.

また,大きな目標を達成するためには,個人の能力だけでなく,組織全体が目的を共有し,それぞれの専門性を尊重しながら率直に議論できる文化が必要です.肩書や立場ではなく,事実と技術的な妥当性を重んじ,困難な課題に対して互いに責任を押し付けるのではなく,解決のために協力すること.そのような組織をつくることも,現代の技術者に求められる重要な仕事です.

本書に描かれる「The Right Stuff」は,一部の英雄だけが生まれながらに持つ特別な才能ではありません.日々の学びと経験を通して,自らを鍛え,誠実に仕事に向き合うことによって培われるものです.

航空宇宙分野を志す学生はもちろん,将来,企業や大学,研究機関など,さまざまな組織でものづくりや研究に携わるすべての学生に読んでいただきたい一冊です.本書は,優れた技術者とはどのような人間であるべきか,そして優れた組織とはどのような文化を持つべきかを考える機会を与えてくれる,時代を超えた名著です.

残念ながら,日本語版(『ライトスタッフ』)は現在絶版となっており,新刊での入手は困難です.
ただし,できれば英語の原著をぜひ読んでいただきたいと思います.
トム・ウルフの力強い文章からは,日本語訳以上に当時の空気や緊張感が伝わってきます.

 

The Right Stuff

 

図書館ではこの図書を所蔵
英語版 (駿:||   船:933||W84
日本語版(駿:||   船:933.7||W84
※表紙画像は紀伊國屋書店BookWebから提供されています。
こちらをクリックすると紀伊國屋書店BookWebページが開きます。

 

ページトップへ