おすすめの本

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☆おすすめの本☆指定金融機関の未来 藤木 秀明著 
 推薦者:伴周一(一般教育)

『指定金融機関の未来』は、金融や行政を扱った本格的な専門書でありながら、実は理工系の学生にとっても非常に面白く、教養書として、さらに実利にもつながる実用書として読む価値の高い一冊です。ぜひ一度、手に取ってみてほしい本です。

この本が扱っているテーマは「地方自治体と銀行の関係」です。私たちは普段、「お役所のお金はどの銀行が管理しているのか?」「自治体ってどうやってお金を借りているの?」「え、そもそも借りるの?」といったことをほとんど意識しません。しかし実は、この仕組みこそが、公共事業やインフラ整備、地域経済を支える“社会のど真ん中”の問題なのです。

指定金融機関とは、自治体が税金や公共料金などの公金を管理・出納するために指定する金融機関のことで、いわば「自治体専属のメインバンク」です。私たちがコンビニで税金を払えたり、自治体が公共事業をスムーズに進められたりするのも、この仕組みが裏で支えています。本書は、この制度の歴史や仕組みをわかりやすく整理しながら、「実はこの制度、今かなり揺らいでいる」という問題を、大量のデータと具体例をもとに分析しています。

私たちからすると、役所の手続きも「最近ちょっと便利になったな」くらいの感覚かもしれません。しかし本書を読むと、お金の流れから見た自治体の姿がまったく違って見えてきます。公開情報を丁寧に整理・分析することで、表からは見えない自治体財政のリアルな構造が浮かび上がり、正直かなり“生々しい”話も出てきます。

特に興味深いのは、自治体が発行する地方債が、長年「リスクゼロの安全資産」とされ、「自治体は潰れない」と信じられてきた理由と、その“安全神話”が実は崩れつつあるという点です。夕張市の財政破綻など、具体的事例を通じて、「なぜそうなったのか」「何が問題だったのか」が非常にリアルに分析されています。

また本書では、企業金融の世界で使われてきた「メインバンク理論」を、自治体と銀行の関係に応用しています。これは、銀行が単なるお金の出し手ではなく、情報や信用の面でも重要な役割を果たすという考え方ですが、これを自治体に当てはめると、「指定金融機関は単なる事務処理係ではなく、自治体財政を支える重要なパートナーである」という見方が浮かび上がってきます。同時に、その限界や問題点もはっきり示されており、「なるほど、これは簡単な話じゃないな…」と感じさせられます。

終盤では、人口減少、デジタル化、金融業界の変化といった現実を踏まえ、指定金融機関制度の未来像が議論されます。単に昔の制度を守るのではなく、自治体と銀行が「地域課題を一緒に解決するパートナー」として再設計される必要性が語られ、技術・データ・制度がどう社会を支えるのかという、まさに理工系的な問いにもつながっていきます。

「お金」「制度」「社会構造」という、普段あまり意識しないインフラを可視化してくれる点で、本書は理工系学生にとって非常に良い教養書です。自分の専門とは違う視点から社会を理解することで、将来、公共事業やインフラ、企業活動に関わるときの“視野の広さ”が確実に変わります。少し腰を据えて、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

 

指定金融機関の未来

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