私の専門の「都市計画」においては、人口動態が重要な指標となるため、人口の増減にはとても関心がある。日本の人口が減少していることは周知であるが、都市を維持・発展させるために、わずかでも人口が増加してほしいと心から思っている。
なぜ、日本の人口が減少しているのか。生涯未婚率が男性で25.7%、女性で14.9%(2020年国勢調査)だから、結婚する人が減ったなとか(なぜ結婚できないのかの理由は本書に示されている)、合計特殊出生率も1.34(2020年人口動態統計)だから、結婚しても1人しか子供を持たない世帯が増えたなとか(この認識が間違いであることも本書で示されている)、と考えていたが、本書では独自に実施した調査を含め、各種の統計資料からそれらの理由を明快に示してくれる。さらに、このままでは、都市どころか日本の存続すら危ないと警鐘を鳴らしている。
さて、私の両親が結婚した60年前には婚姻件数は約90万組、私が結婚した30年前には77万組、2019年では約60万組となっている。母数が異なるので一概には比較できないが、人口千人当たりの婚姻率で比べると、両親のころで10%(結婚件数10件/1000人)、私のころは6%、2019年は4.8%とどんどん低下し続けている。
では、皆何歳で結婚しているのか。2019年の平均初婚年齢は男性31.2歳、女性29.6歳。男女とも30歳ぐらいが目安かと一瞬思ってしまうが、実は違う。結婚件数が最も多いのは男性27歳、女性26歳(2019年人口動態統計)。男性の婚姻件数が5割を超えるのは「28歳から29歳の間あたり」、女性では28歳までに57%が結婚しており、男女ともに30歳を超える頃には同世代でパートナーとなるべき選択肢の半数以上は、すでに対象外となっている。この事実を知ると、30歳過ぎたらそろそろなどとのんびり構えていられないことがわかる。
コロナ禍で、人とのコミュニケーションがなかなか難しい状況となってはいるが、学生の皆さんにはできるだけたくさんの友人をつくり、たくさんの恋愛をしようと言いたい。私の感覚では、学生時代から恋人がいたOBOGは、就職して3~5年で結婚する(つまり、25歳から27歳であり、統計結果とも合致する)。逆に恋人がいなかった学生は、結婚までに時間がかかっているように思う。
多様性が重視される時代、どのような生き方をしても構わないと思う一方、本書によれば、未婚者たちは「結婚しないことを選んだ」のではなく、「良い人に巡りあわずに結婚できない」人が多数となっている。社会に出て、企業に勤めてからでも良い出会いはあると思うが、学生時代にしかない出会いもあると思う。ぜひ、学生生活の中で「恋愛」という楽しみを見つけてほしいし、その先の結婚と子育てにも夢を持ってほしい。
以上のような事項以外にも刮目すべきデータがいろいろと示されている。本書はお勧めの1冊です。
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(駿:367.4 || H19 船:367.4 || Mi )
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