著者は、日本大学生物資源科学部の教授であった科学史の専門家である。津田梅子が津田塾大学前身の「津田英学塾」の創始者であることは周知の事実であろう。6歳で国費留学生として米国へ旅立つ際には、皇后宮からも「婦女の模範となるべき」とのお言葉を得ている。しかし、17歳で帰国した日本には彼女の経験を活かす環境は整備されていなかった。彼女は暗中模索の中、友人に当てた手紙で「今の生活を打ち破って新しい境遇を切り開こう。・・学者になる事が私の使命であるかーそういう事は今の私には分からない。しかし、持って生まれた天分を伸ばしてみたい。・・伸ばしてこそ、新しい生活も開けて来よう。」と伝えている。100年前の梅子のこの発言は、現代の若者の魂にも響く。彼女は求めそして再び旅立ち、1933年ノーベル生理学・医学賞を受賞するトマス・H・モーガン教授と出会う。梅子は論文の共著者として認められ帰国後も研究を続けようと試みている。理工学部に身を置く者として思う、女性科学者の初穂となり得た梅子が今日の環境を見たら、何と言うだろうか?
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